ジェイソンとキンニクの事件簿Ⅲ

走れジェイソン

〜第三部 え、今日って何の日だっけ。……え!? うっそ、マジで!?〜
「ジェっ……ジェイミー!!」
「だーれがジェイミーだ」
 僕はキンニクの言ったことに不満タラタラな顔をして、奴をじとっと睨みつけた。
「…にしてもジェームズ。お前、その恰好……」
「ジェームズじゃねー! つか、人の話を聞けっ!!」
「その恰好、どこかで見たことあるような……」
 その恰好とは、ホッケーマスクを被り、チェーンソーを所持しているというものだった。
 僕は一向に聞く耳を持とうとしないキンニクに嘆息し、奴の質問に答えてやることにした。
「キンニク! 今日は何月何日の何曜日だっ!?」
「えっと……今日は……六月十三日の金曜日だ!」
「ということは?」
「ということは……あっ、そうか! 判ったぞ!! 映画『十三日の金○日』のジェイ○ンのまねか!」
「当たり前だ! つか、気付くの遅えよ!! --キンニク、動くなよ!」
「は?」
 ブイィィィィィ---------ンッ!!
「この縄を、チェーンソーで切る!」
 僕はチェーンソーを掲げて声高らかに宣言し、縄にチェーンソーの刃を当てる。
「させるかァァァ!!(阻止)」
 半分サンが僕に飛びかかってくる。
「二千百五十万円はここアル!」
 半分サンの背後から、リーが叫ぶ。
「え、うそ! どこ? どこ?」
 半分サンがきょろきょろとあたりを見回してるスキに--
 ドガッ
 リーが力任せに二千百五十万円(台紙付き)を投げると、ありえないほど鈍くて大きな音を立てて半分サンに命中した。
「うわぁぁぁぁっ!! 痛っ! しかも何コレただの画用紙じゃねーか!! 何でこんなものが当たっただけでこんなに……ん? 何だこのお金……二千百五十円分だ。しかも横に『万円』って書いてある…(何故)」
「そう、それが二千百五十万円アルヨ! 」
 リーは自慢げに言い放つ。
「……(黙)」
 画用紙を凝視して黙りこくった半分サン。
「ダメアルカ?」
 ちょっと不安になったのか、リーは上目遣いに半分サンを見て尋ねた。
「……ダメなわけないだろう! れっきとした二千百五十万円だろ、これ!(喜)」
「……え」
 予期もしない半分サンの言葉に、僕は思わず手を止めてしまった。
「何だ、そんな物騒な方法で乗り込んでくるから、てっきり払えないのかと思い込んでしまったが……払えるのなら払えると言ってくれればよかったのに(後悔)」
「え……」
 僕は、キンニクを救出するまでの間、ちょっとでも時間を稼げたらいいな、と思って二千百五十万円(台紙付き)を採用したのだが……
「ごめんアル。言い忘れたネ」
 ま…まさか、半分サンって……生粋のバカ!?
 こんな子供もだませそうにもないシロモノでだまされるなんて……
 ただのバカじゃないよ、生粋のバカだ!!
 でもまぁ、そのバカさのおかげで事件が円満に解決でき……
「って、こんなのにだまされるバカがいるか---っ!!(怒)」
 と、半分サンは絶叫して、床に二千百五十万円(台紙付き)を投げつけた。
「ええっ!? だまされなかったアルカ?」
「あれはだまされていたフリをしただけだ!(告白)」
 胸を張って告白する半分サンを、僕たちは疑いのまなざしを向けた。
「いやぁー、さっきまで絶対にだまされていましたよねー?」
「そうだなー」
 僕たちが皮肉をこめて言うと、半分サンはピキッとこめかみに青筋を立て、それを振り払うかのように叫んだ。
「ええ--いっ! うるさい! とにかくキンニク君を十字架に縛り付けている縄は切らせないぞ!(宣言)」
「お言葉ですが、もう切りましたよ」
「うっそ--------------んっ!!(衝撃)」
「ハー。やっと自由に動けるようになったぜぃ」
 縄が解かれ、自由になったキンニクは、バキボキと首を鳴らした。
「さぁキンニク、半分サンをやってしまえ!」
 意気揚々と叫ぶ僕に、キンニクは思わぬ言葉を浴びせた。
「いや、お前がやれ」
「……え?」
「だって俺武器持ってねーもん。さぁジェイソン、そのチェーンソーで奴をやっちまえ!!」
「えぇぇ!? この僕が!?」
 と尻込みする僕に、キンニクはある『条件』を出した。
「じゃあ、あいつをやっつけたら、お前をちゃんとした名前で呼んでやる。--あーんど、俺の筋肉を少し貸す!」
「……え!?」
 筋肉を…少し……貸す……!?
 ブイィィィィ------------ンッ!!
「オラオラオラ〜〜っ!! ジェイソン様のお通りだァァ!!」
 キンニクの『条件』を聞いて豹変した僕を見て、キンニクはぼそりと呟いた。
「…すっげ〜……あいつ、そんなに筋肉ないこと悩んでたのか……」
 一方、僕の標的にロック・オンされた半分サンは。
「うわぁぁぁぁ!! ちょっと待って! チェーンソー振り回すと危険だからっ! 切れるから! マジで切れるから! だから止めてっ!!(慌)」
 かなり必死に抵抗していた。
 しかし、今の僕にそんなものは通用しない。
 何故ならば。
「キ--ン--ニ--ク---……」
 ブィィィィィ-------------ン……
「くれェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 僕の頭の中には、そのことしかなかったからだ。
 ブィィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンッ!!
 僕はチェーンソーの回転数を上げ、ブンブン振り回した。
「うわぁぁぁぁ----っ!! やめてぇぇぇぇっ!! 死ぬっ!! 生きてないけど死ぬっ!! ええい、逃げよっ!!(逃)」
 半分サンは逃げようとして理科Ⅱ教室の入り口のドアの方へ向かう。
「そ--う--は--さ--せ--ねぇぇ----っ!!」
 僕はチェーンソーを振り回しながら彼を追いかけ、そして……
 ズブッ
「うぎゃああああああっ!!!」

 ……夜の学校に、断末魔の叫びがこだました。

          

「うっ…うっ…うっ…(泣)」
 僕が振り回していたチェーンソーは、半分サンの尻に突き刺さってしまった。でも、体が真っ二つになったり、刃が体を貫通しなかっただけ幸いだったと言うべきか。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「いや…いいのだよ…イテテ」
「本っ当にごめんなさい! ノリに乗っちゃったとはいえ、こんなこと……」
「謝る必要はねぇ」
 ひたすら謝る僕に、キンニクは冷たく言い放った。
「確かにコイツの傷は、お前の持ってきたチェーンソーが付けたものだ。だが、コイツはそれ以前にぼったくりをしてるんだ。前科もある。だから、これくらいのこらしめは必要だろう」
「いや…でも……」
「行くぞ」
「あっ! 待てよキンニク!」
 プチン!
 僕は、教室を退出したキンニクを追いかけようと、思わず台に付いているスイッチを押してしまった。
 ブイィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン……
「え」
 シャ-----------------ッ!!
「うわぁぁぁ!!」
 ガッシャ---------------ン!
 そして、何か物置きっぽい所に突っ込んでしまった。
「…バーカ…」
「バカ言うな! これ以外に手がなかったんじゃぁぁ!! …イテテテ」
「そんなこと言うんなら、キンニクさん、あなたジェイソンさんを運ぶネ!」
「そうよね。そうしていればこんなことなかったはずだわ」
「あ? 俺がオメーを助けてやったによぉ、何不満もらしてんだよ」
「僕が彼女を助けたんだろーが!! ってかむしろ僕がお前を助けてやったんだろ--がァァァ---っ!!」
「あ、それもそうだな」
「『あ、それもそうだな』じゃねーよ! お前の方がバカじゃん!」
「オメー今日テンション高ぇな」
「誰が高くしてると思ってんのか!! ってかオメー最初と最後しか見てねークセにそんなこと言うなッ!!」
「ま、一件落着ということで」
「なぁにが一件落着だボケッ!! つーかお前さっきの約束覚えてるよな!?」
「約束? あぁ、半分サンをやっつけたらお前と腕相撲一本勝負してやるってヤツか?」
「違いますよ! つか、そんな約束した覚えもねーよ! しかも何でよりにもよって腕相撲!? --約束ってのは、僕が半分サンをやっつけたら僕のことをちゃんとした名前で呼んでやるし、お前の筋肉を少し貸してやる、ってヤツですよ!!」
「え? そんな約束、したっけ?」
「とぼけるなよ!! このまましらばっくれて踏み倒そうとしたってそうはいきませんからねっ!!」
「そんな約束、した覚えないけどな〜」
「しましたよ! 何なら数ページ前に戻ってみますか? つか、戻って見てこい!」
「や〜だねっ♪」
 キンニクはスキップで逃走を図った。
「あ! そこで拒否するってことは、自分がそういう約束をしたって心当たりがあるんですねっ!?」
「さーな。それが知りたきゃここまでおいで〜♪」
 僕は軽やかにスキップして遠ざかってゆくキンニクを見つめ、思った。
 …か、完全に、からかわれてる……!!
 ぶちっ。
 僕の中で、何かが切れる音がした。
「にっ…逃がすものか……!」
 ぱちん!
 僕は怒りに任せて台に付いているスイッチを押した。
 し---ん。
「…あれ?」
 ぱちんっ。
 し-----ん。
 ぱちん。
 し--------ん。
「あれェェェェ---------っ!?」
 こ、これって、まさか……
「で、電池切れ----------っ!?」
 僕は慌てて壊れたテレビを直すがごとく台をバンバンと叩き、もう一度スイッチを入れる。
 ぱちっ。
 し-----------ん。
「うっ、動かない……!!」
 そうしている間にも、キンニクの姿はだんだん小さくなってゆく。
「ちょ、待てよキンニク〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 ……僕の叫びは、夜の学校に寂しく響き渡ったのであった。

          

「うっ…うっ…うっ…(涙)」
 その頃、半分サンは一階男子トイレの個室の中にいた。
「ヤベッ、痔になりそー(慌)」
 僕(ジェイソン)のチェーンソーから受けた傷は、思ったよりも深刻だった。
「ってかコレ痔じゃね? ちょっと待って、これマジで痔じゃね!? うわっ、マジで!? どっ、ど〜しよォォォっ!!(超慌)」
 半分サンは、痔になってしまった。
「えぇぇぇぇっ!? 今まで痔になったことなんて一度もなかったのに!! この五十年間一度もそんなことなかったのにっ!! えぇぇぇぇっ!?(超超慌)」
 ごめんなさい、半分サン。君の犠牲はムダにはしませんよ……
「えぇぇぇぇっ!? ちょっと、その『犠牲』って何!? まさか痔になったこと!? ってかちょっ……誰か助けてぇぇぇぇぇっ!!(救助求ム!)」
 ……半分サンの絶叫も、夜の学校(ってかトイレ)にむなしく響き渡ったのであった……


『ジェイソンとキンニクの事件簿 走れジェイソン』第三部 完


 ★あとがき★
 ……はい! すみません!! 「ジェイソンで3部立て? ハァ!? ざけんなよ!! お前の文章は長すぎてただでさえ読みづらいのに3部って……読者に読ませない気かァァァ!!」と心の中で叫んでる人もいますよねきっと。
 多分ここまでたどりつけてない人もいるんじゃないかな。
 まぁそれはそれでいいですよ。強要してませんし。
 でも、コレ部誌には載せたんですけど、顧問の先生がこのときばかり違う先生に変わってましてね、チェックが入るようになってたんです。だから最後の半分サンの一節は抜いて提出したんです。つまり皆様はその貴重な没部分を見ていらっしゃるわけですよ。
 ……でもさあ……そうすると次の部誌のネタとかみ合わないところがあるのよねぇ……また全力で書き換えるか……  え? そりゃもちろん次の部誌のことも考えてますって。
 ていうかもう書き始めてるからね。序盤で放置プレイになってるけどwww
 まぁそんなこんなで、もう私のストックがなくなりましたので(ヲイ!!)、当分ジェイソンの更新はナシかと。
 今度文化祭で部誌を売りますので、その日に更新できたらいいなと思います。
 少なくとももう一作は書くつもりなので、もう少し 生ぬるい目で見守ってやってくださいませ。
 それではまた10月中旬ごろに。
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